リュウグウノツカイは、その神秘的な外見と希少性から、世界中で多彩な名称で呼ばれています。本記事では、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、中国語、韓国語など各国で定着している呼称や、そのカタカナ表記を一覧にまとめました。多文化にまたがる伝承や伝説の背景も併せて解説し、深海魚としてのリュウグウノツカイの魅力を再発見していただけます。
リュウグウノツカイとは
リュウグウノツカイ(竜宮の使い、学名:Regalecus russellii)は、アカマンボウ目リュウグウノツカイ科に属する深海魚で、かつてはこの属の唯一の種と考えられていましたが、現在では2種が有効とされています。体全体は銀白色で、側面に沿って薄灰色や薄青色の線条が交互に走り、背びれ、胸びれ、腹びれは鮮やかな紅色を呈します。これらの特徴から、その神秘的な外見は多くの伝説や民間伝承の源となり、和名「竜宮の使い」という名称に結実しています。
一般的な全長は約3メートルですが、最大では8メートルに達した個体も報告され、現生する硬骨魚類の中で最長クラスに入ることが知られています。体は左右から押しつぶされたように平たく、特に頭部が最も高く、尾に向かって細長くなる独特な形状をしています。
生息域は主に太平洋の外洋深海で、底から離れた中層に漂いながら単独で生活しています。普段は全身をほぼ直立させた状態で静止し、移動時には体を前傾させ、長い背びれを波のように動かして泳ぐと考えられています。さらに、捕食や襲撃された際には、体を自ら切断するという防衛行動が観察されることもあります。
リュウグウノツカイは、その希少性と特徴的な外見から、世界各地で多彩な伝説や民間信仰の対象となってきました。西洋ではシーサーペント(海の大蛇)伝説の一端を担い、「ニシンの王(King of Herrings)」と呼ばれるなど、漁の吉凶を占う前兆と見なされることもありました。中国や台湾においては「鶏冠刀魚」や「皇帯魚」として親しまれ、日本においては古典文献に登場する人魚伝説のモデルとされるなど、その存在は各地域で異なる形で語り継がれています。
これらの伝承は、リュウグウノツカイが普段は外洋深海でひっそりと生活しているために人目に触れる機会が極めて少なく、目撃例が報じられるたびに大きな話題となることに起因しています。また、一部では地震や津波などの天変地異の前触れとされる俗説も存在しますが、科学的な検証によりその因果関係は否定されるなど、謎と伝説に包まれた存在として今日も関心を引き続けています。
リュウグウノツカイの名称一覧
英語
- Oarfish
(オーフィッシュ) - Giant oarfish
(ジャイアント オーフィッシュ)
スペイン語
- Pez remo
(ペス レモ) - Pez remo gigante (Regalecus glesne)
(ペス レモ ヒガンテ)
フランス語
- Poisson-rame
(ポワソン=ラム) - Régalec, roi des harengs, ruban de mer ou poisson-rubana (Regalecus glesne)
(レガレック/ロワ デ ザーレン/リュバン ド メール/プワソン ルバナ)
ドイツ語
- Riemenfisch
(リーメンフィッシュ)
イタリア語
- Pesce remo
(ペッシェ レモ)
ポルトガル語
- Peixe remo
(ペイシェ レモ) - Regaleco
(レガレコ) - Regalecus glesne, conhecido popularmente como peixe-remo, regaleco, relangueiro ou rei-dos-arenques(レガレクス・グレスネ/ペイシェ レモ、レガレコ、ヘランゲイロ、レイ ドス アレネイス)
ロシア語
- Рыба-весло
(リバ ヴェスロ) - Рэмень-рыба (селядцовы кароль, рэмнецел)
(レメン=リバ 〔セリャドツォヴィ カロール、レムネツェル〕) - Рэмень-рыба (селядцовы кароль, рэмнэцэл)
(レメン=リバ 〔セリャドツォヴィ カロール、レムネツェル〕) - Сельдяно́й коро́ль
(セルダヨーニィ コロール) - Сельдяной король
(セルダヨーニイ コロール)
中国語(普通話・香港など)
- 龙宫使者
(リュウグウシシャ) - 皇帶魚 / 龍宮使者 / 鯡魚王 / 海魔王 / 地震魚 / 白魚龍(コウタイギョ/リュウグウシシャ/ヒギョウオウ/カイマオウ/ジシンギョ/ハクギョリュウ)※ 複数の呼称が存在します
韓国語
- 용궁어
(ヨングンオ) - 리본이악어
(リボニアコ)
アラビア語
- سمك المجداف
(スマク アルマジュダーフ)
ヒンディー語
- नाव मछली
(ナーヴ マチャリ)
タイ語
- ปลาเรือ
(プラー ルア) - ปลาออร์
(プラー オー)
インドネシア語
- Ikan dayung
(イカン ダユング) - Ikan sabuk raksasa
(イカン サブク ラクササ)
ベトナム語
- Cá mái chèo
(カー マイ チェオ)
その他の言語・地域の名称・バリエーション
- Airokala
(アイロカラ)※ 一部地域または文献で見られる呼称 - Hlístoun červenohřívý
(フリストウン チェルヴェノフリーヴィー)※ スラヴ系言語(例:チェコ語)のバリエーションと考えられます - Riemvis
(リームヴィス)※ 同一名称が複数回見受けられます - Sildekonge
(シルデコンゲ)※ 北欧(例:デンマーク語など)の呼称 - Silkių karalius
(シルキュー カラリウス)※ リトアニア語 - Sillkung
(シルクング)※ スウェーデン語など北欧の言語バリエーション - Sneesvis
(スニースヴィス)※ 地域や文脈により使用される名称 - Wstęgor królewski
(ヴステンゴル クウォレフスキ)※ ポーランド語
セルビア語・ウクライナ語(キリル文字表記例)
- Оселе́дцевий коро́ль чуба́тий
(オセレドツェヴィイ コロール チュバーティイ)※ ウクライナ語または類似の表記 - ※その他、ロシア語表記の変種として上記の複数例あり
ヘブライ語
- דג משוט ענק
(ダグ マショット アナク)
ペルシア語(ファールシー語)
- پاروماهی بزرگ
(パールマーヒー バズル)
科学名
- Regalecus glesne
(レガレクス・グレスネ)※ 学術的な表記として国際的に使用される名称
リュウグウノツカイに関する世界各地の伝承や謎
- 西洋のシーサーペント伝説
リュウグウノツカイの神秘的な姿が、巨大な海蛇の伝説や「ニシンの王(King of Herrings)」といった伝承の起源となっています。漁業の吉凶を占う前兆として語られる例もあります。 - 中国・台湾の伝承
「鶏冠刀魚」や「皇帯魚」として親しまれ、独自の海の神話や漁にまつわる伝説の中で重要な存在とされています。 - 日本の人魚伝説
古典文献(『古今著聞集』、『甲子夜話』、『六物新誌』など)に登場する人魚の描写(白い肌、赤い髪)は、リュウグウノツカイの銀白色の体と鮮やかな赤い鰭と重ね合わされ、人魚伝説のモデルとされることが多いです。また、地震や津波の前兆とする俗説も存在します。 - インドネシアおよび東南アジアの伝承
深海に棲む巨大生物として、天変地異や神秘的な現象の前兆と結びつけられることがあり、各地域で独自の神話や伝承が語られています。 - その他の地域の海の怪物伝説
ヨーロッパをはじめとする各地で、リュウグウノツカイの目撃例が海の怪物伝説の一部として語り継がれており、その謎めいた存在が様々な伝承や民間信仰に影響を与えています。
これらの伝承は、リュウグウノツカイが外洋深海にひっそりと生息するため、目撃例が稀であることから生じる神秘性に起因しています。各地域で異なる表現がなされる一方で、その印象的な外見が共通の謎や伝説を形成していると言えます。
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