『兵法三十六計(へいほうさんじゅうろっけい)』は、中国の魏晋南北朝時代に書かれた著名な兵法書で、その著者は宋の将軍、檀道済です。この書物は、戦術を六段階の三十六通りに分類してまとめています。
世界的に知られる兵法書『孫子の兵法』と比較して、『兵法三十六計』は民間でより広く流通しています。現代でも、『兵法三十六計』は日本だけでなく世界中で「処世の知恵」をまとめた書物として多くの人々に利用されています。
また、ことわざにある「三十六計逃げるに如かず」の語源になっています。
三十六計逃げるに如かず
【読み】 さんじゅうろっけいにげるにしかず
【意味】 どんなに巧妙な策略を立てても、状況が不利な場合には逃げることが最も賢明な選択であるという教えを表しています。つまり、無理に戦わず、一時的に退くことで、より良い機会や状況を待つという戦略的な思考を示しています。
兵法三十六計 一覧
勝戦計
こちらが戦いの主導権を握っている場合の定石。
第一計:瞞天過海(まんてんかかい)
瞞天過海
天を瞞いて海を過る(てんをあざむいてうみをわたる)
原文:備周則意怠、常見則不疑。陰在陽之内、不在陽之對。太陽、太陰
敵に繰り返し行動を見せつけて見慣れさせておき、油断を誘って攻撃する。何食わない顔で敵を騙す兵法・計略を指す。
出典:Wikipedia
第二計:囲魏救趙(いぎきゅうちょう)
囲魏救趙
魏を囲んで趙を救う(ぎをかこんでちょうをすくう)
原文:共敵不如分敵 敵陽不如敵陰
敵を一箇所に集中させず、奔走させて疲れさせてから撃破する。
敵を集中させるよう仕向けるよりも、敵を分散させるよう仕向けるのがよい。敵の正面に攻撃を加えるよりも、敵の隠している弱点を攻撃するのがよい。
出典:Wikipedia
第三計:借刀殺人(しょくとうさつじん)
借刀殺人
刀を借りて人を殺す(かたなをかりてひとをころす)
原文:敵已明、友未定、引友殺敵、不自出力、以損推演
同盟者や第三者が敵を攻撃するよう仕向ける。
敵が我に対して攻撃意図を明らかにしたときに、同盟国が対応をまだ決定していなかったなら、この同盟国を引きずり込んで敵を攻撃させるよう仕向けよ。我が方の労力を払うのでなく、損卦すなわち山澤損をもって推し進めよ。(同盟国が)喜んで自分のものを差し出させるよう仕向けよ。
出典:Wikipedia
第四計:以逸待労(いいつたいろう)
以逸待労
逸を以て労を待つ(いつをもってろうをまつ)
原文:困敵之勢、不以戦、損剛益柔
直ちに戦闘するのではなく、敵を撹乱して主導権を握り、敵の疲弊を誘う。
敵の勢いを衰えさせ枯れさせるには、戦闘そのものではなく、損剛益柔によるのである。
出典:Wikipedia
第五計:趁火打劫(ちんかだごう)
趁火打劫
火に趁んで劫を打く(ひにつけこんでおしこみをはたらく)
原文:敵之害大、就勢取利、剛決柔也
敵の被害や混乱に乗じて行動し、利益を得る。
敵の被害が大きいときは、勢いに就いて利益を取る。これは剛決柔、すなわち澤天夬である。
出典:Wikipedia
第六計:声東撃西(せいとうげきせい)
声東撃西
東に声して西を撃つ(ひがしにこえしてにしをうつ)
原文:敵志乱萃、不虞、坤下兌上之象、利其不自主而取之
陽動によって敵の動きを翻弄し、防備を崩してから攻める。
敵の士気が乱れ落ち、判断して行動できていないときは、「坤下兌上」すなわち澤地萃の象である。 敵が統制を失ったのを利用して、勝利を収める。
出典:Wikipedia
敵戦計
余裕を持って戦える、優勢の場合の作戦。
第七計:無中生有(むちゅうしょうゆう)
無中生有
無の中に有を生ず(むのなかにゆうをしょうず)
原文:誑也、非誑也、実其所誑也、少陰、太陰、太陽
偽装工作をわざと露見させ、相手が油断した所を攻撃する。
最初に、敵が本気にするような、はったり、偽装を敵に示して欺く。次に、それがはったり、偽装であることを敵に気づかせる。仕上げに、再び同じ手段を敵に示しても、敵は油断して反応しない。ここで一気に攻撃して敵を破る。
出典:Wikipedia
第八計:暗渡陳倉(あんとちんそう)
暗渡陳倉
暗かに陳倉に渡る(ひそかにちんそうにわたる)
原文:示之以動、利其静而有主。益動而巽。
偽装工作によって攻撃を隠蔽し、敵を奇襲する。
示威行為、偽装を敵に示す。それに隠して我が攻撃の主力をおく。
出典:Wikipedia
第九計:隔岸観火(かくがんかんか)
隔岸観火
岸を隔てて火を観る(きしをへだててひをみる)
原文:陽乖序乱、陰以待逆。暴戻恣睢、其勢自斃。順以動豫、豫順以動。
敵の秩序に乱れが生じているなら、あえて攻めずに放置して敵の自滅を待つ。
敵の秩序に乱れがあれば我は放置して敵の自滅自壊を待つ。こちらが攻めずに放置すれば、敵は団結する理由を失い、内紛の火種は大きな火事となる。
出典:Wikipedia
第十計:笑裏蔵刀(しょうりぞうとう)
笑裏蔵刀
笑いの裏に刀を蔵す(わらいのうらにかたなをかくす)
原文:
敵を攻撃する前に友好的に接しておき、油断を誘う。
敵を攻撃する前段階として、まずは友好的に接近したり講和停戦して慢心させる作戦を指す。
出典:Wikipedia
第十一計:李代桃僵(りだいとうきょう)
李代桃僵
李、桃に代って僵る(すもも、ももにかわってたおる)
原文:
不要な部分を切り捨て、全体の被害を抑えつつ勝利する。
損害を受けざるを得ないときには、不要な部分を犠牲にして、全体の被害を少なく抑えつつ勝利するように図る戦術のこと。
出典:Wikipedia
第十二計:順手牽羊 (じゅんしゅけんよう)
順手牽羊
手に順いて羊を牽く(てにしたがいてひつじをひく)
原文:
敵の統制の隙を突き、悟られないように細かく損害を与える。
組織が大軍になるにつれて統制の隙が生まれることを突く作戦や、敵に悟られぬように細かく損害を与えてゆく作戦を指す。
出典:Wikipedia
攻戦計
相手が一筋縄でいかない場合の作戦。
第十三計:打草驚蛇(だそうきょうだ)
打草驚蛇
草を打って蛇を驚かす(くさをうってへびをおどろかす)
原文:
状況が分らない場合は偵察を出し、反応を探る。
出典:Wikipedia
第十四計:借屍還魂(しゃくしかんこん)
借屍還魂
屍を借りて魂を還す(しかばねをかりてたましいをかえす)
原文:
死んだ者や他人の大義名分を持ち出して、自らの目的を達する。
亡国の復興などすでに「死んでいるもの」を持ち出して大義名分にする計略。または、他人の大義名分に便乗して自らの目的を達成する計略。さらに、敵を滅ぼして我が物としたものを大いに活用してゆく計略も指す。
出典:Wikipedia
第十五計:調虎離山 (ちょうこりざん)
調虎離山
虎を調って山を離れしむ(とらをあしらってやまをはなれしむ)
原文:
敵を本拠地から誘い出し、味方に有利な地形で戦う。
敵が有利な地形にいるところに出向いて戦うのは、自ら敗北を求める愚行である。このような場合、敵を本拠地から誘い出し、味方が有利な地形で戦うようにすることが望ましい。
出典:Wikipedia
第十六計:欲擒姑縦(よくきんこしょう)
欲擒姑縦
擒えんと欲すれば姑く縦て(とらえんとほっすればしばらくはなて)
原文:
敵をわざと逃がして気を弛ませたところを捕らえる。
もし敵と十分な戦力差が無いならば、窮鼠猫を噛む事態を避けねばならないので、敵をわざと逃がして気が弛んだところを捕えるのが良い。追いすぎれば敵は踏みとどまって必死に反撃するが、逃げ道を与えてやればそちらに向かって逃げようとする。敵を追い詰めてはならない。敵の闘志を殺ぎ、力を失わせてからであれば容易くこれを捕えることができる。
出典:Wikipedia
第十七計:抛磚引玉 (ほうせんいんぎょく)
抛磚引玉
磚を抛げて玉を引く(れんがをなげてぎょくをひく)
原文:
自分にとっては必要のないものを囮にし、敵をおびき寄せる。
自身の未熟だったり誤りのある意見をまず述べて他人の価値ある意見を引き出す、立派な意見を引き出す呼び水とすることも。
出典:Wikipedia
第十八計:擒賊擒王(きんぞくきんおう)
擒賊擒王
賊を擒えんには王を擒えよ(ぞくをとらえんにはおうをとらえよ)
原文:
敵の主力や、中心人物を捕らえることで、敵を弱体化する。
敵の主力を叩き、指揮官、中心人物を捕らえられれば、末端の部隊といちいち交戦せずとも敵を弱体化できるという、攻撃目標選択の妙と、効果判断の重要性を教える計略。
出典:Wikipedia
混戦計
相手がかなり手ごわい場合の作戦。
第十九計:釜底抽薪(ふていちゅうしん)
釜底抽薪
釜の底より薪を抽く(かまのそこよりまきをぬく)
原文:
敵軍の兵站や大義名分を壊して、敵の活動を抑制し、あわよくば自壊させる。
兵站、大義名分など敵軍の活動の源泉を攻撃破壊することで、敵の活動を制し、あわよくば自壊させんとする計略。
出典:Wikipedia
第二十計:混水摸魚(こんすいぼぎょ)
混水摸魚
水を混ぜて魚を摸る(みずをかきまぜてさかなをさぐる)
原文:
敵の内部を混乱させ、敵の行動を誤らせたり、自分の望む行動を取らせる。
敵の内部を混乱させて(混水)、弱体化したり、作戦行動を誤らせたり、我の望む行動を取らせるよう仕向ける戦術。
出典:Wikipedia
第二十一計:金蝉脱殻(きんせんだっかく)
金蝉脱殻
金蝉、穀を脱ぐ(きんせんからをぬぐ)
原文:
あたかも現在地に留まっているように見せかけ、主力を撤退させる。
蝉が抜け殻を残して飛び去るように、あたかも現在地に留まっているように見せかけておいて主力を撤退させるのである。撤退の場合だけでなく、戦略的な目的で主力を移動させたい場合にもそのまま使える手段である。
出典:Wikipedia
第二十二計:関門捉賊(かんもんそくぞく)
関門捉賊
門を関ざして賊を捉う(もんをとざしてぞくをとらう)
原文:
敵の退路を閉ざしてから包囲殲滅する。
我が敵より十分に優勢であれば、窮鼠猫を噛む可能性を恐れる必要は無いので、敵を包囲殲滅できる好機を逃してはならない。逃走している敵を追撃することを戒めるのは、逃走が陽動であれば、追跡した部隊がワナや伏兵に襲われるからである。
出典:Wikipedia
第二十三計:遠交近攻(えんこうきんこう)
遠交近攻
遠く交り近く攻む(とおくまじわりちかくせむ)
原文:
遠くの相手と同盟を組み、近くの相手を攻める。
出典:Wikipedia
第二十四計:仮道伐虢 (かどうばっかく)
仮道伐虢
道を仮りて虢を伐つ(みちをかりてかくをうつ)
原文:
攻略対象を買収等により分断して各個撃破する。
特に、いったん同盟して利用したものも後には攻め滅ぼすことを指す。
出典:Wikipedia
併戦計
同盟国間で優位に立つために用いる策謀。
第二十五計:偸梁換柱(とうりょうかんちゅう)
偸梁換柱
梁を偸み柱に換う(りょうをぬすみはしらにかう)
原文:
敵の布陣の強力な部分の相手を他者に押し付け、自軍の相対的立場を優位にする。
梁に使うような太さの木材を誤って柱に使えば建物が倒壊してしまうことから、敵国の王や重臣が無能な人間に入れ替えられるように工作して弱体化すること、あるいは、陽動作戦を繰り返して敵の布陣を崩し、自軍が攻撃しやすい「梁」の部分を生じさせることを言う。
出典:Wikipedia
第二十六計:指桑罵槐(しそうばかい)
指桑罵槐
桑を指して槐を罵る(くわをゆびさしてえんじゅをののしる)
原文:
本来の相手ではない別の相手を批判し、間接的に人心を牽制しコントロールする。
出典:Wikipedia
第二十七計:仮痴不癲(かちふてん)
仮痴不癲
痴を仮るも癲せず(ちをいつわるもてんせず)
原文:
愚か者のふりをして相手を油断させ、時期の到来を待つ。
出典:Wikipedia
第二十八計:上屋抽梯(じょうおくちゅうてい)
上屋抽梯
屋に上げて梯を抽す(おくにあげてはしごをはずす)
原文:
敵を巧みに唆して逃げられない状況に追い込む。
たくみな宣伝・説得によって敵を欺き、そそのかして行動させる。そして、援助や補給が断たれる状況、逃げられない状況に敵を追い込んで自傷行為に及ばせたり、攻撃して損害を与える。敵に実力以上の行動をさせることが要点
出典:Wikipedia
第二十九計:樹上開花(じゅじょうかいか)
樹上開花
樹上に花を開す(じゅじょうにはなをさかす)
原文:
小兵力を大兵力に見せかけて敵を欺く。
出典:Wikipedia
第三十計:反客為主(はんかくいしゅ)
反客為主
客を反して主と為す(きゃくをはんしてしゅとなす)
原文:
一旦敵の配下に従属しておき、内から乗っ取りをかける。
敵にいったん従属あるいはその臣下となり、内から乗っ取りをかける計略。時間をかけて行うべきものとされる。
出典:Wikipedia
敗戦計
自国がきわめて劣勢の場合に用いる奇策。
第三十一計:美人計(びじんけい)
美人計
美人の計(びじんのけい)
原文:
土地や金銀財宝ではなく、あえて美女を献上して敵の力を挫く。
色仕掛けで相手の戦意を蕩かせてしまう計略。勢いのある相手と正面からぶつかり合うのは愚策である。敵が強いのであれば美人を献上するのが良い。
出典:Wikipedia
第三十二計:空城計(くうじょうけい)
空城計
空城の計(くうじょうのけい)
原文:
自分の陣地に敵を招き入れることで敵の警戒心を誘い、攻城戦や包囲戦を避ける。
あえて自分の陣地に敵を招き入れることで敵の警戒心を誘う計略のこと。敵方に見破られた場合は全滅の危険性があり、心理戦の一種である。
出典:Wikipedia
第三十三計:反間計(はんかんけい)
反間計
反間の計(くうじょうのけい)
原文:
スパイを利用し、敵内部を混乱させ、自らの望む行動を取らせる。
敵の間者(スパイ)や内通者を利用する計略を言う。すなわち、敵の間者に偽情報が流れるように工作して、その結果、敵内部の離間や粛清を図ったり、敵に我の望む行動をとらせるよう仕向ける。
出典:Wikipedia
第三十四計:苦肉計(くにくけい)
苦肉計
苦肉の計(くにくのけい)
原文:
人間というものは自分を傷つけることはない、と思い込む心理を利用して敵を騙す。
出典:Wikipedia
第三十五計:連環計(れんかんけい)
連環計
連環の計(れんかんのけい)
原文:
敵と正面からぶつかることなく、複数の計略を連続して用いたり足の引っ張り合いをさせて勝利を得る。
複数の計で大きな効果を狙ったり、複数の勢力を連立させる等して敵内部に弱点や争点をつくりだし足の引っ張り合いをさせる兵法である。
出典:Wikipedia
第三十六計:走為上(そういじょう)
走為上
走ぐるを上と為す(にぐるをじょうとなす)
原文:
勝ち目がないならば、戦わずに全力で逃走して損害を避ける。
勝ち目が全くないなら全軍をあげて敵を避ける。勝利が不可能と認識したときに退却して損害を回避できるのは、指揮官が冷静な判断力を失わずにすんでいるからこそ可能なことである。
出典:Wikipedia
以上、兵法三十六計の読み方・意味などを見やすくまとめた一覧でした。現代でもビジネスにおいて戦略や戦術の参考書として世界中で読まれている書物ですので、この機会にしっかり熟読して、仕事や生活に役立ててみてはいかがでしょうか?
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